【新連載 アキバ社労士の労務最前線 vol.5】
秋葉原に、『社会保険労務士事務所オフィス松本』を開設する実務家社労士が、人事担当者の悩み・労働関係諸法令など、労務の最前線情報をお届け致します。
今回は、『継続雇用制度の対象者基準』についてお伝えします。
高年齢者雇用安定法により、従業員を65歳までの雇用することが事業主に義務付けられています。もし、65歳以前の定年を定めているならば、次のいずれかの措置を講じる必要があります。
- (1)定年の引き上げ
・・・定年を65歳以上にする。
- (2)継続雇用制度の導入
・・・定年年齢に達した後、そのまま勤務延長する。
または、定年退職した後に再雇用する。 - (3)定年の定めの廃止
多くの会社では、継続雇用制度を導入しているようです。
継続雇用制度は、原則、希望者全員を対象とする制度の導入が望ましいのですが、各企業の実情に応じた対応が取れるよう、継続雇用対象者の基準を設けることが認められています。
ただし、対象者を限定する場合は、事業主と労働者が話し合って「継続雇用制度の対象となる高齢者の基準に関する『労使協定』」を結ぶことが必要になります。
しかし、協議を重ねても合意に至らない場合は、特例として就業規則等により基準を定めることができます。
(従業員が301人以上の企業は、平成21年3月31日まで、300人以下の企業は平成23年3月31日迄)
何故、このような特例ができるのかというと、
労使協定は、事業主と労働者が合意に至らなければ締結することはできませんが、
就業規則は、労働者の同意を必要とせず、事業主が一方的に変更することができるからです。
しかし、この特例も3月31日迄で終わります。
それ以降は、継続雇用制度の対象者に基準を設ける場合は『労使協定』が必要になります。
そして、『労使協定』を定めた旨を就業規則に定め、変更後の就業規則を労基署に届出ることが必要になります(労使協定の届出は必要ありません)。
労使協定が未締結のままだと、高年齢者雇用安定法に違反することになります。
ちなみに、継続雇用制度の対象者の『基準』は、次のように考えられます。
- 恣意的に誰かを排除する内容でないこと
- 労働者が自ら基準に適合するかを予見できるもの
- 必要とされる能力が客観的に示されていること etc
例えば、「会社あるいは上司が認めた者」という、基準とはいえないような基準は認められていません。また、「男性に限る」、「組合活動に従事していない者」等が認められないのは言うまでもありませんね。
厚生労働省では、次の2つの観点から策定された基準が望ましいとしています。
- 意欲、能力等をできる限り具体的に測るものであること(具体性)
- 必要とされる能力等が客観的に示されており、該当可能性を予見することができるものであること(客観性)
by office-matsumoto | 2011-02-07