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自転車通勤者への対応

『月刊総務5月号』(4月8日発売)「総務の引き出し」に車両管理として、「自転車通勤者への対応」を書かせていただきました。

最近のエコブームや健康を意識して、また東日本大震災の際の公共交通機関の長時間にわたる交通マヒ等から、都心部を中心に自転車通勤者が増えています。
これと比例して増加しているのが自転車事故です。
転倒や自動車等との接触による被害事故だけではなく、通勤者自身が加害者となることもあり、企業の「使用者責任」が問われる場合があります。そこで、自転車通勤のリスクを十分に検討し、企業として自転車通勤を認めるかどうかを早急に判断する必要があるでしょう。

たとえば、公共交通機関の利用が可能であり、企業が通勤手当を支払っている場合には、自転車通勤を禁止することができます。
また、従業員の疲労を考えると、一定の距離以上の自転車通勤を認めない、交通量の多い通勤ルートを利用し、事故を起こす可能性が高いと考えられる従業員については自転車通勤を制限することも考えられます。
自転車通勤について検討し、もし認めるならば、申請方法・許可基準など一定のルールを整備する必要があります。

自転車通勤の許可基準

自転車通勤について、一定の基準を設け、運用します。許可基準としては、次の三点が考えられます。

(1)自転車の定義
俗にママチャリと呼ばれるシティサイクルから、スポーツタイプ、競技用などさまざまな自転車があり、速度も異なります。
たとえばピストバイクは、前輪または前後輪にブレーキがない自転車で、道路交通法上、整備不良の自転車であり公道を走行することが禁じられています。
また、電動アシスト自転車は道路交通法では自転車、ペダル付電動自転車は原動機付自転車に該当します。さらに原動機付自転車についても「自転車通勤」の自転車に含まれるか明確にしておきましょう。

(2)運転者の資格・教育
自転車通勤を希望する者の過去の自転車利用に関する道路交通法の違反歴、疾病その他の状態により運転が可能か、通勤距離・ルート等から自転車通勤が妥当かどうかを検討します。
また、「安全運転教育の受講」を義務付けるなど、安全運転に努めるよう指導することが望まれます。
「携帯電話を使用しながらの運転」「飲酒運転」「傘を差しての運転」など、道路交通法遵守を徹底させ、違反した場合は自転車通勤の許可を取り消す措置も必要です。

(3)民間保険の加入
●信号無視した自転車の成人男性が、横断歩行中の女性に衝突・死亡……五四三八万円
●携帯電話を使用しながら自転車に乗った女子高生が、前方歩行女性に衝突・重大な障害……五〇〇〇万円
自転車事故にかかわる裁判では、前記のような高額な損害賠償が必要となるケースが多く存在します。逆に、自転車運転者が大きなケガを負うこともあります。
残念ながら自転車事故の危険性の認識は十分とはいえず、自転車向けの保険は普及しているとはいえません。
もし、事故が起きた際、通勤者本人に支払い能力がなければ、自転車通勤を認めていた企業に使用者責任が及ぶことがあります。
対策方法としては、民間保険の加入を義務付けが考えられます。
自転車通勤の申請時に、加入する保険証券の提出を求め、契約更新時にも書類の提出を求めるなど継続して確認するとよいでしょう。
たとえば「TSマーク付帯保険」は、TSマークの貼られた自転車の運転中に事故を起こした際に、自転車運転者が交通事故により障害を負った場合に適用される「傷害補償」と、自転車運転者が第三者に傷害を負わせてしまった場合に適用される「賠償責任補償」があります。
賠償責任保障は、最高二〇〇〇万円を限度に支払われる保険です。
従業員の通勤による負傷には労災保険が適用されます。
通勤労災は、住居と就業の場所との間を「合理的な経路および方法」で移動する事故が対象になります。
通勤経路を逸脱中、あるいは中断以降は通勤労災の対象とならないので、自転車通勤者にこの点をよく説明し、合理的な経路を外れるリスクを理解させておく必要があります。

駐輪場の確保と通勤手当、業務利用について

駐輪場を企業で準備する場合は、指定した場所に駐車することを義務付けます。
また、従業員が駐輪場を準備するならば、書類等を提出させ確保したことを確認します。
近年は、自転車の違法駐輪が問題視されており、従業員の違法駐輪を黙認することがあれば企業の管理責任が問われます。
また、企業あるいは従業員が準備した駐輪場の費用について明確にする必要があります。

通勤手当の支給は法令で求められているものではありません。
したがって、通勤手当を実費補填と位置付けるならば、自転車通勤者に通勤手当を支給しないことも可能です。
しかし、雨の日や体調が悪い日に公共交通機関を利用すれば、実費を精算する必要があります。
また、一定の金額を自転車から支給された交通費を不正に得ていれば通勤者に通勤手当として支給する場合は、全員一律の金額では賃金と見なされる可能性があります。
自転車のみの通勤と自転車の他に電車やバス等を利用して通勤している場合では、通勤手当の非課税限度額は異なります。
企業に無断で自転車通勤をしていた場合の罰則も定めておいた方がいいでしょう。
たとえば公共交通機関で通勤すると届け出ていながら、実際には自転車通勤をして会社懲戒の対象になることが考えられます。

近所へのお使いなどに、従業員の通勤用の自転車を利用することがあります。
もし、業務上利用していて事故を起こし加害者となった場合は、企業は使用者として損害賠償責任や運行供用者責任を問われることになります。

自転車通勤を認めるのかそうでないのか、また、認めるならば手続き・ルールを「自転車通勤規程」等に明確に定めておく必要があります。
併せて関連する書式(自転車通勤許可申請書等)を用意します。
手続きを明確にして運用することで、会社の管理下で自転車通勤が行われていることが明確になります。

by office-matsumoto | 2012-04-08

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