最難関の資産管理、車両管理を極める!第2回
前回、従業員が交通事故を起せば、従業員本人だけでなく、会社にも「使用者責任」や「運行供用責任」が問われることになるとお伝えしました。
今回は、「使用者責任」についてもう少し考えてみましょう。
「使用者責任」って何?
使用者責任は、民法715条に規定されています。
『第715条 (使用者等の責任)
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。』
この条文は、従業員が業務中に第三者に損害を与えた時は、その使用者にも損害を賠償する責任があるということを規定しています。条文では但し書きで、次の場合は責任を免れると規定しています。
(1)使用者(会社)が、被用者(従業員)の選任、及び事業の監督についても相当な注意をした場合
(2)相当の注意をしても、損害の発生を避けようがなかった場合
この条文を従業員が交通事故を起した場合に当てはめてみると、「相当の注意」をしたか否かの問題は、使用者が「安全運転の確保」にどれほど注意したか否かの問題になると言えそうです。
そこで、業務の形態上、従業員が交通事故を起す可能性がある企業では、「安全運転の確保」が「事業主の責任」となります。また、事業主自らが「安全運転を確保」するための必要な業務全てを行うことが難しい場合には、安全運転管理のために必要な権限を与えた人を代務者として立てるのが望ましいといえます。
安全運転の番人、「安全運転管理者」の役割とは?
一定数以上の車両を使用する事業所は、安全運転管理者、副安全運転管理者の選任が義務付けられています。
支店や事業所など車両を使用する拠点ごとに、下記の選任基準を満たす場合は安全運転管理者および副安全運転管理者を選任します。
反対に、選任基準を満たさなくなった場合や、選任した安全運転管理者等が退職や転勤等で事業所からいなくなる場合、また資格要件を満たさなくなった場合は解任をします。選任・解任とも15日以内に都道府県の公安委員会に届け出が必要で、違反した場合は「5万円以下の罰金」となります。
さて、道路交通法施行規則(第9条の10)には、安全運転管理者の業務として次の7項目が定められており、管理者でなくとも「安全運転の確保」の為に何をなすべきかの参考になるでしょう。
道路交通法施行規則(第9条の10) 要約
(1)運転者の適性や処分等の把握
運転者の適性、技能、知識や運転者が道路交通法等の遵守状況を把握。
(2)運行計画の作成
最高速度違反、過積載、過労運転、放置駐車違反等の防止に留意した自動車の運行計画を作成。
(3)交代運転者の配置
長距離運転又は夜間運転等による疲労で安全な運転ができないおそれがあるときは、交替運転者を配置。
(4)異常気象時等の措置
異常な気象、天災その他の理由により安全運転ができないおそれのあるときは、安全運転を確保するための措置を講ずること。
(5)点呼等による安全指示
運転者の点呼を行う等により、飲酒、過労、病気などにより正常な運転をすることができないおそれの有無を確認し、安全運転を確保するために必要な指示を与えること。
(6)運転日誌の記録
運転の状況を把握するため必要な事項を記録する日誌を備え付け、運転を終了した運転者に記録させること。
(7)安全運転指導
運転者に対し、自動車の運転に関する技能、知識その他安全な運転を確保するため必要な事項について指導を行うこと。