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緊急時の雇用管理(迂回時の交通費、労災)

(1)迂回した場合の通勤費、会社の近くに宿泊した場合の宿泊費について

使用者に、法律上は「通勤費および宿泊費を支払う義務」はありません。
しかし、就業規則に「通勤手当は、実費を支給する」とあれば支給する必要があります。しかし、その場合は、支給金額に限度を設けるか、また、どのような場合に支給対象とするか等の基準を検討する必要があるでしょう。

(2)交通機関等の影響により、欠勤・遅刻・早退の扱い

会社が休業・欠勤・早退を命じれば、その日(時間)を補償する必要があります。しかし、従業員からの申し出により欠勤・遅刻・早退を行えば、その時間について賃金は発生しません。
実務上は、交通機関の遅れによる遅刻は賃金を控除していない会社が多いと思いのではないでしょうか。また、欠勤についても有給休暇の消化等で対応してはいかがでしょうか。

(3)迂回した(通常と違う)経路で通勤した場合に、ケガをした場合

会社に申出た経路以外でも、通勤労災は適用できます。
なお、これは非常時の扱いとは関係なく、会社に申請した通勤路以外でも、通勤時の負傷と認められれば通勤労災が適用されます。

(4)地震時の負傷について

「作業方法、作業環境、事業場施設の状況などの危険環境下の業務に伴う危険が現実化したものと認められれば、業務上の災害」であり、「通勤に通常伴う危険が現実化したものと認められれば、通勤災害」と考えられます。 (3/11 厚生労働省の通達等から)

なお、「兵庫県南部地震における業務上外等の考え方について」に具体例が提示されています。

1 業務災害

【事例1】作業現場でブロック塀が倒れたための災害
ブロック塀に補強のための鉄筋が入っておらず、構造上の脆弱性が認められたので、業務災害と認められる。

【事例2】作業場が倒壊したための災害
作業場において、建物が倒壊したことにより被災した場合は、当該建物の構造上の脆弱性が認められたので、業務災害と認められる。

【事例3】事務所が土砂崩壊により埋没したための災害
事務所に隣接する山は、急傾斜の山でその表土は風化によってもろくなっていた等不安定な状況にあり、常に崩壊の危険を有していたことから、このような状況下にあった事務所には土砂崩壊による埋没という危険性が認められたので、業務災害と認められる。

【事例4】バス運転手の落石による災害
崖下を通過する交通機関は、常に落石等による災害を被る危険を有していることから、業務災害と認められる。

【事例5】工場又は倉庫から屋外へ避難する際の災害や避難の途中車庫内のバイクに衝突した災害
崖下を通過する交通機関は、常に落石等による災害を被る危険を有していることから、業務災害と認められる。

【事例6】トラック運転手が走行中、高速道路の崩壊により被災した災害
高速道路の構造上の脆弱性が現実化したものと認められ、危険環境下において被災したものとして、業務災害と認められる。

2 通勤災害

【事例1】通勤途上において列車利用中、列車が脱線したことによる災害
通勤途上において、利用中の列車が脱線したことは、通勤に通常伴う危険が現実化したものであることから、通勤災害と認められる。

【事例2】通勤途上、歩道橋を渡っている際に足をとられて転倒したことによる災害
通勤途上において、歩道橋を渡っている際に転倒したことは、通勤に通常伴う危険が現実化したものであることから、通勤災害と認められる。

(5)地震による休業手当について

労基法第26条で「使用者の責に帰すべき事由」による休業は、休業手当が必要と定められています。地震・津波等の不可抗力の場合は、「使用者の責に帰すべき事由」にはあたりません。従って、休業手当は不要です。
なお、不可抗力と認められるには、①その原因が事業の外部より発生した事故であること、②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしても避けることができない事故である、2つの要件を満たすことが必要です。

地震・津波等により、事務所が倒壊したために休業 ← 休業手当 不要
地震等により客が来ないため仕事にならないため休業 ← 休業手当 必要
※実際は、ケースバイケースで判断することになります。

(6)計画停電による休業手当について

3/15の厚生労働省の通達で、「計画停電の時間帯に休業させることは、不可抗力の要件に該当し、休業手当の支払は必要がない」、「計画停電の時間帯以外の休業は、不可抗力の要件に該当せず、休業手当の支払が必要である」となっています。
なお、計画停電の時間帯以外の時間帯も含めて休業しないと、企業の経営上著しく不適当である場合は、休業手当の支払は必要がないとされています。

計画停電により、機械・設備が動かず休業せざるを得ない ← 休業手当 不要
計画停電により、客が少ないので従業員の半分を休ませた ← 休業手当 必要
※実際は、ケースバイケースで判断することになります。

(7)休業手当を支払った場合に、雇用調整助成金は使えます

今回の地震に伴う経済上の理由により売上が落ちるなど事業活動が縮小した場合は、助成金が利用できます。
経済上の理由として、「交通手段の途絶により原材料の入手や製品の搬出ができない」「損壊した設備等の早期の修復が不可能」「計画停電の影響を受けて売上が落ちた」「風評被害により売上が落ちた」等があります。

事業活動の減少としては、最近3か月の生産量、売上高等がその直前の3か月又は前年同期と比べ5%以上減少している雇用保険適用事業所の事業主が対象になりますが、
青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県のうち災害救助法適用地域に所在する事業所の場合は、最近1か月の生産量、売上高等がその直前の1か月又は前年同期と比べ5%以上ダウンしていれば対象になります。

by office-matsumoto | 2011-03-25

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