育児介護休業法の改正について
令和4年に育児介護休業法が改正され、男性の育児休業がとりやすくなりました。そこで、改めて育児介護休業法について整理しましたので、従業員からの育児・介護休業等の申出に対応できるようにしておきましょう。
育児休業
1. 子が1歳(保育所に入所できない等は最長2歳)に達するまでの育児休業の取得が可能
父母ともに育児休業を取得する場合は、子が1歳 2か月に達するまでの間の1年間に育児休業の取得が可能:パパママ育休プラス
2. 子が1歳に達するまでに分割して原則2回までの育児休業の取得が可能
3. 育児休業期間中は、賃金の支払い義務はない(就業規則に無給と規定)
4. 育児休業開始月から終了月の前月(※終了日の翌日が属する月の前月)まで、社会保険料が免除
5. 4に加えて、同月内に14日以上育児休業等を取得した場合も社会保険料が免除 ←要件見直し
6. 賞与月の末日を含む連続1か月超(暦日)の育児休業を取得した場合、賞与保険料が免除 ←要件見直し
7. 育児休業期間中は、育児休業給付金(賃金の67%又は50%)の受給が可能
※ 育児休業を2回に分割しても、休業開始時賃金は初回の育児休業時の金額
8. 有期契約労働者は、 子が1歳6か月に達するまでに労働契約(更新される場合には更新後の契約)が満了することが明らかでない場合は取得が可能
※ 育児休業の申出があった時点で、事業主が「更新しない」の明示をしていない場合は、更新がないことにはなりません
出生時育児休業(産後パパ育休)
出生時育児休業は、「パパ休暇」をより使いやすくした制度が新たに創設されました。
1. 子の出生後8週間以内に4週間まで出生時育児休業(産後パパ育休)を2回に分割して取得が可能、育児休業とは別に取得が可能
2. 労働者と使用者が合意した範囲内で休業中の就業が可能(労使協定の締結)
※ 労働者が就業を希望した場合に限り就業可能、事前に就業可能日、就業可能時間帯を申出
※ 就業可能な範囲は、休業期間中の所定労働日数の半分、所定労働時間の半分以下
3. 出生時育児休業期間中は、賃金の支払い義務はない(就業規則に無給と規定)
4. 出生時育児休業給付金(賃金の67%)の受給が可能。
※ 休業期間が28日の場合は就業日数は10日(80時間)、28日未満の場合は、休業期間により按分
※ 休業期間中の就業日に賃金が支払われた割合により給付金を調整
※ 3回以上の出生時育児休業をした場合、3回目以降は給付金の対象外
※ 育児休業開始日から通算28日超の出生時育児休業は対象外
介護休業
1. 対象家族1人につき、通算93日の範囲内で合計3回まで、介護休業の取得が可能
2. 介護休業期間中は、賃金の支払い義務はない(就業規則に無給と規定)
3. 介護休業給付金(賃金の67%)の受給が可能
※有期契約労働者は、介護休業開始予定日から93日経過日から6か月を経過する日までに労働契約(更新される場合には更新後の契約)が満了することが明らかでない場合は取得が可能
介護休暇
1. 介護等をする場合に年5日(対象家族が2人以上は年10日) 取得が可能(1日又は時間単位)
2. 介護休暇は、賃金の支払い義務はない(就業規則に無給と規定)
子の看護休暇
1. 小学校就学前の子を養育する場合に年5日(2人以上は年10日)取得が可能(1日又は時間単位)
2. 子の看護休暇は、賃金の支払い義務はない(就業規則に無給と規定)
所定外労働・時間外労働・深夜業の制限
1. 3歳に達するまでの子を養育し、又は介護を行う労働者が請求した場合、所定外労働を制限
2. 小学校就学前までの子を養育し、又は介護を行う労働者が請求した場合、月24時間、年150時間を超える時間外労働を制限
3. 小学校就学前までの子を養育し、又は介護を行う労働者が請求した場合、深夜業(午後10時から午前5時まで)を制限
短時間勤務の措置等
1. 3歳に達するまでの子を養育する労働者について、短時間勤務の措置(1日原則6時間)が義務
2. 介護を行う労働者について、3年の間で2回以上利用できる次のいずれかの措置を義務
①短時間勤務制度 ②フレックスタイム制 ③始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ ④介護費用の援助措置
個別周知・意向確認、育児休業を取得しやすい雇用環境整備の措置
(1)事業主に、本人又は配偶者の妊娠・出産等の申出をした労働者に対する育児休業制度等の個別の制度周知・休業取得意向確認の義務
措置実施の際の留意事項 | ① 育児休業・産後パパ育休に関する制度 ② 育児休業・産後パパ育休の申し出先 ③ 育児休業給付に関すること ④ 労働者が育児休業・産後パパ育休期間について 負担すべき社会保険料の取り扱い |
個別周知・意向確認の方法 | ①面談(オンライン可) ②書面交付 ③FAX ④電子メール のいずれか ※③④は、労働者が希望した場合のみ |
(2)事業主に、育児休業及び出生時育児休業(産後パパ育休)の申出が円滑に行われるようにするため、研修や相談窓口の設置等の雇用環境整備措置を講じることが義務
◆次のいずれかの措置を講ずること。
① 育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施
② 育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備(相談窓口設置等)
③ 自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供
④ 自社の労働者へ育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知
◆措置実施の留意事項
① 雇用環境の整備の措置を講ずるに当たっては、短期はもとより1か月以上の長期の休業の取得を希望する労働者が希望するとおりの期 間の休業を申出し取得できるように配慮すること。
② 雇用環境の整備の措置を講ずるに当たっては、可能な限り、複数の措置を行うことが望ましいものであること。
育児休業の取得状況の公表(令和5年4月1日施行)
1. 常時雇用する労働者数1,000人超の事業主に、毎年1回男性の育児休業等の取得状況公表の義務
不利益取扱いの禁止
1. 事業主が、育児休業等を取得したこと等を理由として解雇その他の不利益取扱いをすることを禁止
2. 事業主に、上司・同僚等からの育児休業等に関するハラスメントの防止措置を講じることを義務づけ
実効性の確保
1. 苦情処理・紛争解決援助、調停
2. 勧告に従わない事業所名の公表
手続き
改正によって育児休業給付等の手続き回数が増えます。
また、給付金の活用や保険料の免除を検討される場合は、育児休業の取得時期によって活用できない場合がありますので、休業取得前に十分に確認されるようお願いします。
保険料
社会保険料の免除は、育児休業の開始月から育児休業が終了する日の翌日が属する月の前月までです。また、社会保険料は賞与付きの月末時点で育児休業を取得中であれば社会保険料が免除されていました。
今回の改正で、短期間の育児休業を行うことが想定されるため、次の場合も社会保険料が免除されるようになりましたので、注意をお願いします。
月額保険料:月末時点で育児休業を取得している場合に加えて、同一月内に育休を開始・終了した場合であって、その日数が14日以上である場合にも保険料が免除される。
賞与保険料:月額保険料が免除され、免除された月に賞与が支払われていて、かつ、休業期間が1ヶ月超える場合に賞与に対する保険料が免除される。
by office-matsumoto | 2022-12-03